北米コンテナ船情勢 |
米国西海岸における北米西岸港湾労組(ILWU)と雇用主団体(PMA)の労使交渉は1年近く続いていますが、交渉は佳境を迎えています。4月は自動化が進むロサンゼルス港とロングビーチ港の一部のターミナルにおいて、PMAにより点検目的とされる機材の稼働停止や、労働者派遣プロセスの一方的な遅延があったため、コンテナの荷役効率が鈍化し、一部のコンテナ本船で遅延が発生しました。その後、5月2日に一部の報道でターミナル施設の自動化についての合意が報じられており、現在は賃金と年金給付に関する最終的な交渉が行なわれています。 |
ビートパルプ |
<米国産>
22-23年産の製糖作業及びビートパルプの生産は5月中旬で終了する見込みです。ビートパルプの出荷については、米国内の鉄道会社における労働力不足の影響で製糖工場から、輸出向けの船積み地への輸送が満足にできない状況が続いており、スケジュールの遅延が発生しています。
23―24年産については播種作業が開始されていますが、産地では悪天候が続いており、作業は遅れています。例年5月上旬に終える播種作業は、今年は5月中旬から下旬まで掛かる見込みとなっています。 |
米国西部州における旱魃状況 |
22年産米国産乾牧草の高騰を招いた要因の一つである、西海岸の旱魃状況は改善しています。21年に西海岸全域において非常に厳しい旱魃に直面し、西部各州の酪農家及び肥育農家は、放牧草や購入粗飼料の在庫がないまま、22年産の収穫期を迎えました。不足する在庫に加え、乳価も好調であったことから、特に酪農地帯であるカリフォルニアではアルファルファだけでなく、グラスヘイにおいても旺盛な買付が行なわれ、需要が他州に伝播し、結果として22年産の産地相場上昇につながりました。
昨年の秋口以降においては、西海岸全域で多くの降雪及び降雨があったため、旱魃状況は改善しています。この結果、放牧草も順調に生育しており、内需においてもグラスヘイの需要は落ち着いています。一方、スーダンやクレイングラスの主産地である、インペリアルバレーでは、水源となるフーバーダムの貯水量は歴史的に低水位な状況に変りありません。このため、これまでのように潤沢に農業用水の使用ができない可能性があるため、今後も注視が必要です。

(米国西部州における5月上旬の旱魃状況の比較。左から2023年、中央2022年、右2021年。
赤いほど旱魃は深刻な状況。 出典:Drought Monitor )
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アルファルファ |
<ワシントン州>
コロンビアベースンでは、例年よりも冷涼な気候が続いており、23年産の生育は例年に比べて2~3週間遅れており、5月下旬からコロンビアベースン南部にて1番刈の収穫が開始される見込みです。
22年産は歴史的な高値となった産地相場の影響で、日本、韓国向けだけでなく、年明け以降、中国向けの出荷も低調なことから、産地の輸出業者は例年以上に多くの繰り越し在庫を抱えている状況です。23年産の1番刈は各輸出業者、各国の需要を見ながらの買付になることが予想されています。また州内の酪農家におけるアルファルファ需要は、23年産においても上級品に対しては引き続き一定の需要が見込まれていますが、中級品以下については、需要も落ち着いており、産地相場の軟化が期待されています。

(23年産1番刈アルファルファ圃場 5月上旬コロンビアベースンにて撮影)
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<カリフォルニア州>
カリフォルニア州南部インペリアルバレーではアルファルファの収穫は2番刈の収穫作業が行われています。収穫期の不安定な天候の影響で雨当たり品も発生しましたが、昨年のような内需並びに輸出向けの需要がないことから、産地相場は前年同時期比で軟化傾向にあります。
インペリアルバレー灌漑局の発表によると、4月15日時点でのアルファルファの作付面積は152,868エーカー(前年同期は133,608エーカー)と前年同期比114%と増加しており、過去10年間で最高水準の作付面積となっています。 |
米国産チモシー |
主産地であるワシントン州コロンビアベースン及びエレンズバーグでは、春先に冷涼な気候が続いたものの、順調に生育しており、23年産1番刈の収穫はコロンビアベース南部で5月下旬より開始される見込みです。23年産の作付面積については、コロンビアベースンやアイダホ州では前年比5~10%程度減少すると予想されています。
22年産は歴史的な高値から需要が急激に鈍化し、産地の多くの輸出業者で22年産の旧穀在庫を抱えています。出荷量も減少し資金繰りも厳しくなっていることから、生産農家への支払いが滞るケースも増えています。
21年産までの過去数年の産地相場は、輸出側にとって魅力的であったことから、新規輸出業者の参入が見られました。これらの新規輸出業者は固定客がいないため、顧客獲得のため、古参の輸出業者よりも安価な価格帯で供給をしていましたが、他方で買付業者が増えたことにより、産地での買付が激化し、結果として産地相場が必要以上に過熱する形となりました。直近では、新規参入した輸出業者を中心に、一時的な工場の閉鎖や、週2日程度まで稼働を減らしており、工場の操業に苦慮しています。
(23年産1番刈チモシー圃場 5月上旬エレンズバーグにて撮影)
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スーダングラス |
カリフォルニア州南部インペリアルバレー灌漑局の発表によると、5月1日時点での作付面積は20,704エーカー(前年同期は29,968エーカー)となっており、前年同時期比69%と、この時期としては過去10年間で最低の水準となっています。早播き品の作付面積減少により、この時期に発生する上級品の発生量が限られる可能性があります。一方で産地の輸出業者は例年以上の繰越在庫を抱えているため、23年産は慎重に買い付けを進めると予想されており、産地相場は22年産比で軟化することが期待されています。スケジュールの早い圃場では5月後半から収穫作業が開始される見込みです。 |
クレイングラス |
(クレインは全酪連の登録商標です)
主産地であるカリフォルニア州南部インペリアルバレー灌漑局の発表によると、4月15日時点でのクレイングラスの作付面積は21,983エーカー(前年同期19,983エーカー)となっており、前年同時期比114%と増加しています。22年産の産地相場が生産農家にとって魅力的であったことが作付面積増加の要因と考えられています。一方で、産地の多くの輸出業者において、22年産の繰り越し在庫を例年以上に保有していることに加え、西海岸全域で旱魃が改善されたことから、内需向けの需要が減少しており、23年産の相場は軟化することが期待されています。
23年産はスケジュールの早い圃場で掃除刈り(クリッピング)が4月下旬頃から開始されていますが、収穫されたものは雑草混じりで輸出向けには適さないため、近隣の酪農家及び肥育農家向けに出荷されています。輸出向け品質の収穫は5月中旬頃から本格化する見込みです。 |
バミューダ |
主産地であるカリフォルニア州南部インペリアルバレーにおける4月15日時点の作付面積は64,704エーカー(前年同期61,503エーカー)と前年同期比105%の作付面積となっています。種子に対する旺盛な需要が作付面積の増加要因となっており、23年産の序盤は例年どおり種子用の生産がメインとなり、ヘイの収穫は限定的となる見込みです。 |
ストロー類(フェスキュー・ライグラス) |
22年産ライグラスストローは、日本、韓国向け荷動きが鈍化しているため現地で余剰在庫となっており、産地相場は年明け前に比べ、軟化傾向にあります。 |
カナダ産チモシー |
主産地であるアルバータ州中部クレモナ地区の23年産の作付面積は、前年並みとなる見通しです。産地では冷涼な気温が続いており、4月に入っても夜間に0℃を下回る日が続き、降雪も散見されました。また今春は例年より降雨量が少なかったため、今後の生育期に向け、適度な降雨が必要な状況です。
同州南部のレスブリッジ地区の作付面積も、クレモナ地区同様、前年並みとなる見込みです。気温は4月になっても氷点下が続き降雪もありましたが、乾燥した気候が続き土壌水分は少なく、生育に遅れが出ています。 |
豪州産
オーツヘイ |
西豪州では5月上旬より23年産の播種作業が本格化しています。土壌水分が重要になる時期ですが、降雨量は地域によってバラつきが出ており、この先3-4週間において、まとまった降雨の予報が出てているため、今後の天候が期待されています。作付面積については、直近穀物相場が軟調なことを受け、オーツヘイの作付意欲は強く、地域によっては、前年比で最大20%程度増加する見込みです。
南豪州と東豪州では、この先、数週間のうちに、播種作業が開始されます。輸出業者と生産者の間で、事前契約が進められていますが、生産者からの聞き取りでは、東豪州では最大30%程度、南豪州では10%程度、オーツヘイの作付面積が前年比で増加する見込みとなっています。
輸出需要については、各国から強い引き合いが続いています。内需向けについては、22年産が不作となった東豪州において、自給飼料の不足する生産者からの引き合いが増えており、低級品でも輸出向けよりも高値で売買されています。 |