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DMSシステム事例紹介

事例1 「納得して投資を先送りすることができた」

A牧場は経産牛45頭、個体乳量8,600kg、自給飼料の圃場8haを有しています。飼料価格の高騰下においても家計費を賄うには充分な所得を得ることができていました。数年前から規模拡大の意志を強く持っていたことから、圃場面積を徐々に拡大する等、周到な準備を進めてきました。必要となる投資額は老朽化した牛舎の改築、増頭分の増築、導入費用を合わせると数千万円に及ぶため、スーパーL資金の無利子化措置を受けることを念頭に置いていました。この無利子化措置を受けるためには期限内に計画書を提出する必要があったため、最終的な投資判断を早々に下す必要に迫られたのです。
そこで、月次決算の内容を元に今後10年間のキャッシュフローを予測してみました。A牧場の生乳1kgあたりから得られる利益から換算すると、増頭による生乳生産量の増加を計算に入れたとしても、償還に必要な額と従来の家計費でギリギリの状態であることが分かりました。A牧場にはこれから就学を控えたご子息がおられるため、家計費は大幅に増えていくことが分かっています。
検討の結果、将来的なキャッシュフローを考えれば、増頭する前に飼養管理を見直し、個体乳量のアップやコスト削減を軌道に乗せた方が規模拡大後のリスクを最小限に抑えることができると判断しました。目先の無利子措置は魅力ですが、それを得るために投資時期を決めるのは本末転倒です。融資が若干の有利子になったとしても投資を数年先に見送り、まず、生乳1kgあたりの利益を高めた方が最終的なキャッシュフローは良好になると、A牧場も納得されました。
“やりたい”から投資を行うのではなく、経営データから”やれる”と自信を持つことが適正な意志決定に繋がります。A牧場の事例では、投資計画、牛群検定、月次決算の推移、キャッシュフローの予測という材料が揃っていたため、本人が納得できる結論に達することができました。

事例2 「こんなに儲かっているはずがない」

B牧場は、酪農と畑作の複合経営を行っています。畑作の収穫期においても乳牛の飼養管理をおろそかにはせず、経産牛60頭で個体乳量10,000kg、空胎日数110日という好成績を実現しています。今でも地域の勉強会には必ず出席し、農場経営に対する熱心な姿勢は変わりません。このような優秀な農家から上期決算の時に聞こえてきた感想が、「こんなに儲かっているはずがない」というものでした。損益計算書で見ると昨年同時期よりも所得が増えているのですが、手元に現金が残っておらず、儲かっている実感が全くなかったのです。早速、分析してみると、①堆肥舎の増築費用(建築仮勘定)の増加、②家計費の増加により、手元の現金が不足している原因だと分かりました。
“黒字倒産”という言葉があるとおり、黒字でも資金繰りの目処が付かず倒産する会社は多くあります。農業の場合、注意しなければならないのは、家計と経営が不明瞭の場合が多く、キャッシュフローの実態がつかめないことです。B牧場は月次決算を行ったことにより、農業経営と家計のキャッシュを把握することができたのです。上期決算の後、B牧場では家計費をしっかりと見直すこと、翌年の専従者給与の設定額を見直すことにしました。油断は禁物です。

事例3 勉強会の効果

C牧場には、慣れない会計ソフトに根気強く付き合って頂きました。C牧場の日記を見せてもらうと、4月:「入力について行けない・・」から始まり、5月:「あまりよく分からない・・」、6月:「少し流れが分かる程度・・」、7月:「自分で入力できるようになった」、と4月から記帳を始めて4ヶ月目に入力に慣れてきたことが伺えます。途中で投げ出さなかったのは、「勉強会に参加してきたので、止められなかった」との本音も。月次決算を習慣にするためには、継続する環境に身を置くのがポイントだと言えます。
勉強会のもう一つのメリットは、他牧場との比較です。牛群の能力については、牛群検定を通して他牧場と比較することはできますが、経営成績というのはなかなか比較する機会がありません。そこで、DMSシステムでは地域別や規模別の指標から経営上の強みと弱みを分析しています。D牧場では、元々記帳作業は定期的に行っていましたが、青色申告が目的であって経営データとして利用はしていませんでした。Dさんは「バルク洗浄、飼料給与作業は手作業でやってきたが、他牧場と比べると動力燃料費が割安であることが分かった。これまでは、機械を購入した場合の投資額ばかりを計算していたが、手作業によるコスト削減効果を実感でき、苦労が報われた気がした。機械の投資にはこだわらず、もう少し手作業で頑張ってもいいと感じた。」とのことです。牧場における時系列の分析や予想は重要ですが、他牧場の比較によって明確になることもあるのです。

 

※Daily Japan増刊号『こうすれば利益が出せる』に掲載されています。